キャッシュレス > news > 消費税増税と関係がある?キャシュレス決済推進に当たり政府が作ったビジョン、施策とは

news

2019年05月22日(水)

消費税増税と関係がある?キャシュレス決済推進に当たり政府が作ったビジョン、施策とは

消費税増税、あるいは東京オリンピック、大阪万博開催を控え、政府主導でキャッシュレス決済の推進対策が行われています。
消費者だけでなく導入する店舗・企業に対してもさまざまな補助政策を行う方針です。
今回は、政府のキャッシュレス決済推進政策について見ていきましょう。

キャッシュレス決済に関連する消費税

2019年10月に消費税が増税されますが、この増税とキャッシュレス決済の推進には密接な関わりがあります
消費税の引き上げに伴う経済政策の1つとして、キャッシュレス決済の普及が挙げられているのです。
また、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博もキャッシュレス推進の追い風となると考えられています。
まずは、どのような方向性を政府が掲げているのかを解説します。

キャッシュレス・ビジョンの目標

経済産業省は2018年4月に『キャッシュレス・ビジョン』を発表。
このなかでキャッシュレス決済の動向や現状を踏まえ、政府としての方向性を示しています。
特に以下の2点を目標として、今後キャッシュレス推進政策を進めていくということです。

2025年までにキャッシュレス4割

2020年には東京オリンピック、2025年には大阪万博が開催され、今以上にインバウンド需要が高まると予想されています。
2015年の経済産業省の調査によると、キャッシュレス決済比率は米国が45%、英国が54%、中国が60%と、諸外国においては半数以上の決済がキャッシュレスで行われています。
韓国に至っては89%と、ほとんどの人がキャッシュレス決済を行なっているという状況です。
一方、日本のキャッシュレス決済比率は18%であり、諸外国と比較すると圧倒的に低い水準となっています。

キャッシュレス決済が当たり前の国の人が日本を訪れたとき、キャッシュレス決済が使えないとなると、当然不便さを感じさせることでしょう。
インバウンド需要を十分に取り込めないといった事態にもつながります。

もともと、2017年に閣議決定された『未来投資戦略2017』のなかで、「2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とする」という目標が掲げられていましたが、『キャッシュレス・ビジョン』では大阪万博が開催される2025年に前倒しとなりました。
これを「支払い方改革宣言」として、急ピッチで対策が進められています。

将来的には80%

さらに、『キャッシュレス・ビジョン』では、キャッシュレス決済比率を世界最高水準にまで引き上げるという目標が掲げられています。

前述のとおり諸外国のキャッシュレス決済比率は40~60%。
そこで、日本は将来的に80%まで引き上げ、国際競争力の強化を目指していくということです。

目標となる具体的な期限については言及されていませんが、「キャッシュレス推進協議会(仮称)」を結成し、産官学が連携しオールジャパンとしてキャッシュレス決済の推進を行なっていくという方針を掲げています。

消費税増税によって変わる事

以上のように2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に、将来的には80%にまで引き上げるという目標が掲げられています。
アベノミクス効果に加え、インバウンド需要の増加などで好景が続いていますが、プラスの展望ばかりではありません。
2019年の消費税増税で消費の低迷も懸念されています。
そこで、政府では経済対策として以下の2点を実施。
これに関してもキャッシュレス決済が大きく関わっているのです。

軽減税率

軽減税率とは、「生活に最低限必要なもの」に対して税金を軽減する措置です。
今回の増税によって消費税率は8%から10%に引き上げられるわけですが、生活必需品に関しては8%に据え置かれます。

具体的には食品や飲料、新聞などが挙げられます。
たとえばスーパーで野菜や飲用水を購入した場合、消費税は8%が適用されるのです。
コンビニの弁当やお惣菜なども軽減税率の対象となります。

一方、外食や酒類の消費税率は10%です。
お水は人間が生きていく上で必要不可欠なものですが、お酒は嗜好品であり、「生活に最低限必要なもの」には当てはまらないというのが根拠となります。

ちなみに、コンビニなどで普及している、店内で買った商品を飲食できる「イートイン」は軽減税率の適用外となります。
一方、自宅で食べるために購入した場合は同一の商品であっても軽減税率が適用されます。

ポイント還元を政府補助

もう一つの経済対策の目玉として挙げられるのがキャッシュレス決済です。
経済産業省は「キャッシュレス・消費者還元事業」として2019年度に2,798億円の予算を計上し、対策を進めていく方針です。

コンビニ大手3社においてキャッシュレス決済で買い物をした場合は2%、中小小売店においてキャッシュレス決済で買い物をした場合は5%のポイントが還元されます。
このポイント還元は増税される2019年10月から2020年の6月まで行われます。
前項で解説した軽減税率とポイント還元を利用することで、むしろ現在の8%よりも低い税率で生活必需品の買い物をするということも可能です。

消費税増税にともなう経済対策と、キャッシュレス決済比率の引き上げという、2つの効果を狙った施策がポイント還元と言えます。

しかし、キャッシュレス決済で消費者がポイント還元の恩恵を受ける、あるいはこの先キャッシュレス決済比率を引き上げるためには、キャッシュレス決済が利用できる店舗や企業が増える必要があります。そこで、政府はキャッシュレス環境の整備に対しても補助を行う方針です。

具体的には中小・小規模事業者に対して「キャッシュレス決済を導入する際に必要な端末などの購入費用の2/3を国が負担し、決済事業者が1/3を補助する(=自己負担なしでキャッシュレス決済に必要な端末が購入できる)」、「キャッシュレス決済を行う際に決済事業者に支払う加盟店手数料の1/3を補助する」という施策が検討されています。

また、複数税率対応レジの購入や改修、受発注システムの改修などに対しても補助金を支給することが検討されています。

こうした補助事業が行われ、なおかつポイント還元が行われる増税後はキャッシュレス決済の導入を検討しているお店や会社にとっては追い風が吹くと言えるでしょう。
割安で設備を導入でき、加盟店手数料も一定期間安くなる上、ポイント還元を受けたい消費者を取り込むことができます

すでに、経済産業省では「キャッシュレス・消費者還元事業」について参加事業者を募集しています。
詳しい要項や応募方法は経済産業省のホームページに掲載されているので、キャッシュレス決済の導入を検討されているのであれば、一度見てみることをおすすめします。

まとめ

  • 1政府はキャッシュレス決済推進を国策として行なっていく方針を掲げている
  • 2「支払い方改革」として、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に引き上げる
  • 3将来的にはキャッシュレス決済比率を世界最高水準である80%にまで引き上げる
  • 4消費税増税にともない、軽減税率とポイント還元が経済対策として行われる
  • 5キャッシュレス決済比率を高めるために2019年度は予算2,798億円を計上
  • 6キャッシュレス決済に必要な端末の購入費や加盟店手数料の補助金支給が検討されている

  |