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2019年11月13日(水)

なぜ中国や韓国はキャッシュレス化が普及したのか?

日本でも2018年頃から各スマホ決済会社によるポイント還元キャンペーンによりキャッシュレス化が促進されていますが、キャッシュレス比率は18.4%(世界10位)という結果です。
お隣の韓国は96.4% (世界1位)であり、中国は65.8%(世界3位)という日本と同じアジア圏に属していながら、キャッシュレス化普及に圧倒的な差が生じています。

今回は韓国や中国でキャッシュレス化が普及した理由を紹介し、日本の更なるキャッシュレス化促進のヒントを探っていきたいと思います!

韓国のキャッシュレス事情

クレジットカード大国として有名な韓国はキャッシュレス比率96.4%という世界で最も高い数値を誇っています。その理由の根底には住民登録番号がクレジットカードと紐づいていることが挙げられます。
また、現在はモバイル決済も普及していて、主要なモバイル決済サービスは3つあります。

Samsung(サムスン)が提供する「Samsung Pay」、韓国大手ポータルサイトの「Naver Pay」、韓国のチャットアプリKakao Talk「カカオトーク」と連携した「KakaoPay」の3つがあります。
その中でも、「Samsung Pay」は韓国モバイル決済市場で80%のシェアを誇りほぼ独占状態となっています。

韓国ではどのようにしてキャッシュレスが普及したのか

経済産業省のキャッシュレス・ビジョンでは、韓国におけるキャッシュレス化は1997年のアジア通貨危機の影響を受け、脱税防止や消費を増やすためにクレジットカード利用を促す施策を講じたことが一要因であると述べています。
では、韓国政府はどのような施策を講じたのでしょうか。
主に以下の3つが挙げられます。

年間クレジットカード利用額の20%の所得控除

30万円を上限に年間クレジットカードの利用額の20%が所得から控除されるようになりました。

クレジットカード利用で宝くじの参加権付与

1000円以上利用したクレジットカード控えに抽選番号が付与され、毎月行われる当選金1億8千万の宝くじに参加できるというものです。

店舗でのクレジットカード取り付けを義務化

年商240万円以上の店舗にはクレジットカードの取り扱いを義務化し、これに応じない場合にはペナルティを科しました。

こうした施策によってキャッシュレス化は進み、「1999年から2002年にかけて、クレジットカード発行枚数は2.7倍、クレジットカード利用金額は6.9倍に急拡大した」とも述べられています。

参考: キャッシュレス・ビジョン(経済産業省)
第9章 韓国の動き(財務総合政策研究所)

中国のキャッシュレス事情

中国のキャッシュレス化は非常に進んでいて、実際に2017年のQRコード決済を含むモバイル決済件数は375億5200万件にものぼります。
モバイル決済件数が多い背景としてやはりモバイル決済可能な店舗が多いことが挙げられます。
例えば、今日の日本ではコンビニなどフランチャイズ展開している企業ではモバイル決済が比較的導入されているイメージがありますが、中国ではフランチャイズ展開している店舗はもちろん、市場の屋台やフリーマーケットでもQR決済が可能となっています。

次にキャッシュレス決済サービスとして主要な3つを紹介します。

中国の主要なキャッシュレス決済サービス3選

銀聯(ぎんれん)カード


引用元:中国ビジネスラボ

銀聯(ぎんれん)カードは中国政府主導で普及されたクレジットカードであり、そのほとんどがデビットカードです。政府主導でカードの普及を促進させた背景は、以前までは銀行決済システムが銀行や省によって異なっていたので、送金トラブルが絶えなかったからです。

また、現在、銀聯(ぎんれん)カードの世界総発行数は70億枚にものぼり、7大国際ブランドカードの1つでもあります。
日本でも様々な業種業態で銀聯(ぎんれん)カードが使えるので、友人の中国人もよく買い物の際に銀聯(ぎんれん)カードを利用するのを目にします!

ALIPAY(アリペイ)

ALIPAY(アリペイ)はアリババグループが運営するECサイト「タオパオ」の決済機能として登場しました。今や8億人以上のアクティブユーザーを抱え、中国モバイル決済市場で54%ものシェアを誇っています。
また、ALIPAY(アリペイ)は決済機能としてだけでなく、「ローン」や「資産運用」など決済という枠を超えたサービスも利用することができます。

WeChat Pay(ウィチャットペイ)

WeChat Pay(ウィチャットペイ)はテンセントが運営するチャットアプリ「WeChat(微信)」の決済機能として登場しました。
現在、3億6000万人がWeChat Pay(ウィチャットペイ)を利用していて、中国モバイル決済市場で38%のシェアを獲得しています。

WeChat Pay(ウィチャットペイ)の決済機能以外の機能として特徴的なのが「ホンバオ(紅包)」という機能です。
ホンバオ(紅包)とは日本でいうお年玉に当たるもので、この機能を利用することでご祝儀をオンライン上で渡すことが可能になりました。

中国ではなぜキャッシュレスが普及しているのだろうか?

中国のキャッシュレス化が進んだ理由①
中国のモバイル決済市場の寡占状態

先ほど述べたように、中国のモバイル決済市場はALIPAY(アリペイ)とWeChat Pay(ウィチャットペイ)の2社で92%のシェアを占めています。寡占状態になることによって、事業者と利用者双方にメリットがあると考えられます。

事業者側は導入すべき決済サービスが、利用者側は利用すべき決済サービスが明確になることがメリットとして考えられます。お互いの決済サービスを認知することで、モバイル決済が普及したのではないかと考えています。

中国のキャッシュレス化が進んだ理由②
政府主導の銀聯(ぎんれん)カード発行

送金トラブルの問題を解決すべく、2002年に中国人民銀行を中心にした金融機関連合「銀聯」が設置され、カードが発行されました。中国政府が主導となって施策を講じたことで「現金の文化」から「キャッシュレスの文化」へと変化していきました。
参照:キャッシュレス決済最前線(技術評論社)

まとめ

以上がなぜ中国や韓国はキャッシュレス化が普及したのか?についてでした。
両国のキャッシュレス化で共通している部分は、政府が施策を講じている点とQR決済がほぼ統一されていることが挙げられます。

今日の日本でもこの2点に取り組み始めているので、政府が掲げる「2025年までにキャッシュレス比率40%」という目標も現実的なものになるのではないでしょうか。

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